生産コスト米国より高くなり 中国製造業苦戦
よいことなのか、わるいことなのか? 中国の労働コストが日本を上回ってしまい、生産コストではアメリカより高くなってしまいました。
圧倒的な生産コストの安さを武器にしてきた中国・・、その唯一ともいえる優位性を喪失してしまったようです!
単位労働コストとは?
日本よリ安く生産して外国に輸出攻勢を掛けてきた中国が、単位労働コストで日本を上回ってしまったと報じられています。
「単位労働コスト」という耳慣れない言葉が突然登場しましたが、「生産コスト」とは何が違うのでしょうか。
分かりやすく自動車で例えると、カローラ1台を作るのに必要な費用の合計が「生産コスト」になります。
「労働生産性」という言葉もあり、こちらは少ない延べ人数で1台を生産すると、労働生産性が高い事になります。
日本は労働生産性が高く中国は労働生産性が低いので、企業が労働者に支払う賃金総額では、中国の方が高くなりました。実際に自動車1台の生産に必要なコストは賃金だけではないので、まだ中国の方が安く生産できるはずです。
とは言え「人件費が安い」の最大の売りにしてきた中国のセールスポイントが消滅した訳で、脱中国が加速するでしょう。多くの日本企業は中国での生産割合を減らしたり、増産計画を取りやめたりして、日本や東南アジアに移転しています。
日米に追いつかれた中国製造業
中国の人件費は平均して年1割上昇しており、工場労働者の平均月収は6万円から7万円になりました。
日本の自動車工場などでは期間工で月給30万円の場合もあるので、まだ4倍も差がある事になります。
これで単位労働コストが逆転したなら、中国では日本の3倍以上の延べ人数で同じ製品を作っている事になります。
中国でも生産性を上げるために自動化やロボットの導入を進めているが、簡単には向上しないでしょう。
それに中国で自動化工場が普及したら13億人の就職先が無くなり、失業率が上昇してしまいます。
日経新聞によると1995年に日本の単位労働コストは中国の3倍だったが、中国の賃金上昇で2013年に逆転しました。
日本企業の中国進出に急ブレーキが掛かったのもこの頃で、企業は中国のコスト上昇に敏感に反応した事になります。
2012年から2014年に掛けて1ドル76円から120円まで円高が進み、その分中国の人民元が高くなったのも影響している。
今後また1ドル80円になれば再逆転するかも知れないが、中国の賃金上昇は止まらないので、割高感は当分続きます。
中国での生産コストそのものも主要因で上昇が続いており、ついにアメリカの生産コストが中国を下回ります。
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の調査では、アメリカでの生産コストは中国を5%上回るだけでした。
カリフォルニアの工場では自動車を100万円で作れるが、中国では95万円で作れるという事であれば、私なら敢えてアメリカ製を買いたいものです。
更に、アメリカでのIT技術の進歩や生産効率向上、特にシェールガスなどエネルギー価格低下が主要因と見られます。
日本はアメリカと違い外国からエネルギーを輸入しているので、条件は中国と同じで。原油安の恩恵は余り無い。
だが日中に生産コストで追いつかれてしまった中国には、他にどんな競争力があるのだろうか。軍事力のみ?